この旅の成り行きはそもそも、ベストフレンド3人がヨガとサーフィンをしに、コスタリカに行くという企画だった。
が、
友達の一人が、航空券をまとめて取る係だったのだけど、「サンホゼ」と「サンフアン」を間違って、強制的にプエルトリコへの旅行となってしまった。
旅の前から憂鬱な気分になってしまい、楽しく穏やかになるはずだった旅行が、行く前から皆、険悪モード。これから5日間を一緒に過ごすというのに、なんともやりにくい雰囲気が漂う。
でも、責任のなすり合いという子供っぽいことをしたくない私達は、それぞれ言いたいことをぐっと飲み込み大人な態度で出発日を迎えた。
そんなふうに始まった旅行は、神の悪戯か、最後の最後まで上手く行かない。お友達のPはサンフランシスコから現地集合。私とDはロスからボストン経由でプエルトリコへ向かう。
が、
ボストンで予測もしてなかった、5時間の遅れ。友達Pは既に現地に着いており、ホテルへ先に行くように指示。不機嫌なPとの会話を終えるが、待ってる私達は待ってる意外には何も出来ない。
くたくたになって、夕方ホテルに到着。私とPは1年以上顔を合わせてなくて、とても久しぶりの再会だった。初日の夜は、3人揃っての再会だった為、ガールズトークに花が咲いた。
疲れていた私達は、昼少し前に起床。朝ご飯を食べようと思っていると、Dが血相を変えてロビーから戻ってきた。
何事かと訪ねると、Dの帰りの航空券が確保出来てないとのこと。。私は、仕事があったので、1週間の滞在でなく、4泊5日で切り上げて、皆より少し早めに帰るようにしてあった。
朝食よりも航空券の状況が優先なので、航空会社に電話をかける。アメリカ系の航空会社は日本と違い対応が遅い。女3人、ベッドに座り、空腹と戦いながら沈黙。こういうエネルギーはどこかで改善しなければ、ずっと付き纏ってしまうのだろう。2時間近く経った後、Dの航空券がやっと確保でき、不機嫌なままお昼ごはんを調達しにレストランへ。
8月のカリブはハリケーンのシーズンで、オフシーズンに差し掛かる。プエルトリコも例外でなく、空腹の私達に容赦なくスコールが降り掛かった。本当に準備の悪い私達は、土砂降りに見舞われびしょびしょに。お互いの顔を見つめるも、言いたい言葉が出て来ない。なんとも惨めな旅行だと思ったのは、私だけではなかったはず。
ランチを食べたレストランで、現地の優しいおじさんに出会い、プエルトリコの東にある『クレブラ島』という場所が絶対オススメだと聞き、期待に胸が膨らみ、少し機嫌が良くなる。
この後は、ホテル近くの観光地「オールドサンフアン」に足を向けた。アメリカ領で一番古いヨーロッパの町並みというだけあり、そこは可愛らしいレンガの道や色とりどりの建物がぎっしりと並んでいた。
一通り街を歩き、お土産などを物色する。
そして、早めにホテルに帰りクレブラまでの行き方などをネットで調べる作業に追われた。
目的地に達するまでの手段は一つに限らず沢山ある。だが、どの道を選ぶかは私達の意思次第である。フェアリー乗り場までタクシーを使うのが、絶対的に最短で安心できるのは間違いない。だが、なぜかローカルバスを使おうと言うことになり、時刻表というものが無いバスを待つ作業から始まった。
英語の通じないローカルバス。片言のスペイン語でなんとか会話をこなしていく。はっきり分からない、理解出来ないときは、余計に不安が募ることがある。そんなこんなで、フェアリー乗り場まで行くという単純作業で、また険悪ムードに陥ってしまう。
一人旅行で楽なのは、周りに合わせないでいいと言うこと。全て自分の責任で、自分のペースで物事がこなせる。全く性格の違う3人での旅行は、単純なことをするにあたっても、まとまった決定をしなければならない。一人一人、自分のエゴを飲み込むという作業をしていかなければなくなる。
結局時間通りにフェアリー乗り場にたどり着けず、次の便まで6時間待たされることとなった。
友達の一人が疲労マックスに達してしまい、今まで心の奥底に止めておいた感情が一気に爆発し、大泣きし始めた。「来たくなかった」「帰りたい」と言うネガティブな言葉が飛び交い、この旅行を一番楽しみにしていた子は、自分の責任だとまた泣き始める。自分の失敗でプエルトリコに皆を連れてきてしまったことに、強く罪悪感を感じていたのか、流れる涙は止まることを知らない。
端から見れば本当にコメディーな場面だったのだろうけど、この状況に居る私は、途方に暮れた。私だって言いたいことは沢山ある。でも、言ったからって何かが改善することはない。今出来ることは、これから出来ることに焦点を変えていくこと。
クレブラ島にある世界一美しいとされるフラメンコビーチでキャンプをする予定だったのだけど、そんな気力はどこにも残っておらず、フェアリーの中から急遽ホテルを探した。
夕日の落ちる前に島に着き、とりあえずホテルまで移動。可愛らしい小さなホテルからは、アメリカ人の大家さん、スーザンが私達を迎えてくれた。泣きじゃくって顔が真っ赤になった二人を見て、冷たいジンジャエールを差し出してくれたスーザン。なんだか暖かくなった。
疲れていた子は昼寝をしてしまい、この日は結局ビーチに行けずに。全てが早く閉まってしまう島で、夜のみ空いているレストランを発見。夕食を食べながら、色々な事を語った。
出逢った6年前とはすっかり状況、環境が変わっている生活をしている私達。お互いの価値観もそれぞれの生活の中で変わってしまった。きっとこれは大人になると言うこと。それは悪い事じゃないけれど、人生の中で、何時しかは自分の進む道を決めなければ行けないときがやってくる。本音をぶつけ合えるからこそ見えてくる自分と言うものがある。でもそれは、一人で生活しててもきっと見えては来ない。心身疲れきってしまった旅行になってしまったけれど、翌日は絶対にビーチに行く約束をし、この日は床に就いた。